関節痛にヒアルロン酸注射は有効?

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関節の痛みや変形性膝関節症に対する一般的な治療の一つにヒアルロン酸注射があります。

しかし、臨床の現場では
「注射を続けているのに痛みが改善しない」
「むしろ動かしづらくなった」
と訴える患者を少なからず見かけます。

なぜヒアルロン酸注射が効かない、あるいは逆効果のように感じられるケースがあるのでしょうか。

その鍵は、関節液(滑液)の本質関節の環境バランスにあります。


■ 関節液の構成

関節液は以下の成分で構成されます。

  • 血漿成分(主に水分・電解質・タンパク質)

  • ヒアルロン酸(滑らかさ・粘性)

関節液のヒアルロン酸濃度や粘性は、単に量だけで決まるのではなく、
滑膜細胞の代謝活動関節内の力学環境によって精密に調整されています。


■ ヒアルロン酸を注射すると “濃度バランス” はどうなるのか

滑膜は本来、関節の状態に応じてヒアルロン酸の合成・分解を行い、
「粘度」「濃度」「潤滑の質」を一定に保とうとします。

しかし、外部から追加でヒアルロン酸が流入すると、

 ① 一時的に“濃度過多”状態になる

→ 関節内の粘性が急に高くなる
→ 粘度が高すぎると滑走性が低下することもあり、動きづらさを感じるケースがある

② 滑膜の調節機能が変化する

→ 外部供給により、滑膜細胞のヒアルロン酸産生が低下する可能性
→ 自己調節能の低下=長期的には関節液の質低下につながり得る

③ 濃度の変化は“流体力学的ストレス”を変える

関節の潤滑は、

  • boundary lubrication(境界潤滑)

  • fluid film lubrication(流体膜潤滑)

など複数の仕組みで成り立っています。

粘性が不自然に変化すると、
「関節面の圧力分布」や「動作中のせん断力」が変わり、
かえって痛みが増すことがあると指摘されています。


■ “ヒアルロン酸が増えれば改善する” とは言い切れない理由

1. 痛みの本質が「関節液の不足」ではない場合が多い

変形性関節症や関節痛の多くは、

  • 関節のアライメント異常

  • 骨・軟骨の圧負荷

  • 関節包の滑走不全

  • 周囲筋の硬さや協調性の低下

  • など様々な要因によって生じます。

ヒアルロン酸はあくまで“潤滑の補助”であり、
力学的問題を解決する治療ではありません

2. 濃度変化は一時的で、根本改善にはつながらない

数日〜数週間で代謝され、元の問題が残ったまま。

3. 濃度変化により関節環境が不安定になる可能性

一部の研究では、

  • 過剰粘度による関節運動の効率低下

  • 炎症の持続

  • 滑膜細胞の代謝変化
    などの可能性が指摘されています。


■ 「悪化」と感じるケースが出るメカニズム

  1. 注射直後の粘度上昇
    → 関節の滑りが重くなり、動き始めの痛みが増える

  2. 内圧の上昇
    → 関節包が張り、痛みセンサーを刺激

  3. 力学的原因を解決していない
    → 歩行や荷重で摩耗ストレスが続き症状が改善しない

  4. 自己ヒアルロン酸産生の低下
    → 長期的には関節液の質が低下

つまり、「注射の有無」よりも、
関節の力学環境×滑膜の代謝×アライメント
という複合要因の方が、改善に圧倒的に重要なのです。


■ 大切なのは「関節液を外から足す」よりも「関節が自分で整う環境づくり」

  • 関節包・靭帯の滑走改善

  • 関節アライメントの調整

  • 骨頭の求心性を高める筋機能改善

  • 歩行・荷重パターンの正常化

  • これらにより関節の力学ストレスが正常化すると、
    滑膜が本来の機能を取り戻し、
    関節液の質も自然と改善していきます。


■ まとめ

  • 関節液は血漿成分+ヒアルロン酸で構成されている

  • 外部からヒアルロン酸を注射すると関節液の“濃度バランス”が変化する

  • 濃度変化は一時的な滑走低下や滑膜機能の変化を起こす可能性がある

  • 根本原因が関節力学にある場合、注射は改善に繋がらない

  • 関節の力学的環境を整えることが関節液の質と関節機能を最も改善する

 

 

〜名古屋のエルスパーク千種〜

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